Date: 12月 15th, 2011
Cate: 「オーディオ」考
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「オーディオ」考(その4)

エディソンのフォノグラフにしても、ベルリナーのグラモフォンにしても、
最初からくり仕掛けの器械だったのが、
ベルリナーのグラモフォンに絞られたことにより発展していく。
そしてアクースティック蓄音器は、ビクトローラのクレデンザ、
HMVの202、203という名器を生み出すまでになっていった。

クレデンザにしてもHMV・203にしても、もう、からくり仕掛けの器械ではなくなっている。
蓄音器の仕組みはおそらく広く理解されていたであろうし、
クレデンザにしても203にしても、それに、他のアクースティック蓄音器は、
このころにはすでに家具として認識されていたのではなかろうか。
音を奏でる家具としての存在が、アクースティック蓄音器であり、
だからこそクレデンザや203の意匠だと私は思っている。

クレデンザも203もアクースティック蓄音器である。
電気をいっさい使わない。
1896年にベルリナーがゼンマイ式のモーターを採用するまで、
フォノグラフもグラモフォンもレコードを聴くためには、
誰かかが一定の速度を保つようにたいへん気を使いながらハンドルを回していなければならなかった。

クレデンザが登場したのは1925年で、この年、アルフレッド・コルトーが電気録音を行っている。
さらにパナトロープ(電気蓄音器)も発売された。

それまで電気を使わずに機械的にカッティングされていたレコードの溝が、
マイクロフォンと真空管によるアンプ、それにカッターヘッドによって刻まれ、
サウンドボックスとラッパ(ホーン)だけによる再生が、
ピックアップ、真空管アンプ、スピーカーという構成へとなっていく。

アクースティック蓄音器から電気蓄音器(電蓄)へとなっていったわけだが、
この点が、最初から電気を必要としたテレビとは異り、
オーディオを家電製品と呼ぶことへの異和感へとつながっているのかもしれない。

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