Noise Control/Noise Designという手法(その30)
マッキントッシュのMC2300が登場したのは、たしか1973年ごろのはず。
私がオーディオに興味をもった1976年には、すでに新しいタイプのパワーアンプではなかった。
管球式のパワーアンプ、MC3500のイメージをそのまま受け継いだかたちのシャーシとパネル・フェイスで、
MC3500はモノーラル仕様で出力350W、MC2300はステレオ仕様で300Wの出力をもつ。
MC2300が新製品として登場したころは300Wという出力は珍しかったのであろうが、
1976年ごろになると300Wクラスの出力をもつパワーアンプは各社から出ていた。
正直、MC2300を欲しいと思ったことはない。
当時はまだ音を聴いたことはなかったけれども、写真から伝わってくるMC2300の雰囲気は、
私が求めているものとは方向性が違っている、と語っていた。
こんなことを書いておきながら、矛盾することを書いてしまえば、MC2300は好きなパワーアンプのひとつである。
MC2300にスマートさは感じられない。いわば武骨なパワーアンプと思う。
そこが欲しい、と思わない理由でもあり、好きな理由でもある。
MC2300を聴いたのは、ステレオサウンドで働くようになってから。
ステレオサウンドの試聴室で聴いたことはない。
編集部の先輩だったNさんのところで聴いたのが、最初だった。
Nさんのところには数回行っている。
いつも仕事の後だった。だから夜遅い時間ばかりで、とうぜんボリュウム全開とはいかない。
ひっそりと鳴らす(あくまでもMC2300としては、ではあるが)と、空冷用のファンはまわらない。
静かなものである。
Nさんのところで他のアンプと聴きくらべたわけではないから、MC2300を聴いたといっても、
あくまでもそれはMC2300を含めてのNさんの音であって、
MC2300の音(というよりもイメージ)は、Nさんの音と重なってしまうところが大きい。
NさんのところではMC2300の下に板が敷いてあった。
米松合板だったと記憶している。
いまでこそアンプの下になんらかのベースを敷くのは、いわばチューニングのための基本のようになりつつあるが、
このころはそんなことはなくて、訊ねてみると、
MC2300の梱包用資材のひとつだということがわかった。
MC2300の重量は約60kg。そのため底部には米松合板がボルトでMC2300に固定された状態で運搬される。
Nさんはそれをつけたまま設置していたわけである。
この米松合板を見たとき、ダンボール箱と発泡スチロールで運ばれてくる他のアンプとは、
明らかに違う何かを感じたのか、音とともに、これが記憶に残っている。