Date: 11月 26th, 2011
Cate: 五味康祐, 選択
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オーディオ機器を選ぶということ(続々続・五味康祐氏のこと)

「いろんな人と旅をしたけれど、あんたと旅をしたのが一番楽しかった」

『五味一刀斎「不倶戴天の」仇となった「金と女」とのめぐり合いを』を読み終わって、
この五味先生の言葉にもどってくると、
五味先生にとって、千鶴子夫人という存在とタンノイ・オートグラフの存在が重なってくるようなところを感じた。

五味先生は「いろんな人と旅」をしてこられた。
いろんなスピーカーを使ってこられた。

なにを使ってこられたのかは、もうここでは書かない。
五味先生のオーディオ巡礼、西方の音、天の聲をお読みになればわかることだ。
そうやってタンノイのオートグラフというスピーカーシステムとめぐり合われた。

このオートグラフとの出合いも、ここで詳しく書く事もないだろう。

オーディオ機器は決して安いモノではない。
けっこうな値段のモノばかりだし、
いまではおそろしく高価になり過ぎてしまったモノは珍しくなくなっている。
だから、オーディオ機器を購入する時は、しっかりと情報を収集して、
音も、もちろん事前に聴く。それもできれば自宅で試聴して、という方もおられよう。
そういう慎重な購入が、いまでは当り前のようになってきている。

そういう買い方をされる方には、五味先生のオートグラフの購入は信じられないことでしかないだろう。
音を聴かれていないばかりか、実物すら見ずに、
イギリスのHi-Fi YearBookの1963年版に掲載されていた写真とスペックと、
それに価格だけで購入を決意されている。

五味先生が買われたころのオートグラフも、またひじょうに高価なモノだった。
「怏怏たる思いをタンノイなら救ってくれるかもしれぬと思うと、取り寄せずにはいられなかった」五味先生。

このオートグラフが、五味先生にとって終のスピーカーシステムとなる。

なぜHi-Fi YearBookを見た時に、そう感じられ思われたのか──。
五味先生の書かれたものを読んでも、オートグラフ以前にタンノイのスピーカーをご自身で鳴らされているけれど、
決してそれは、素晴らしい音とまではいえない音だったことはわかる。
「かんぺきなタンノイの音を日本で誰も聴いた者はいない」、そんな時代に決意されたのは、
ある種の予知能力なのではなかったのか、と週刊新潮の記事を読んで、そう思った。

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