930stとLNP2(その5・補足)
(その5)に書いた4343の組合せのトーンアームに、フィデリティ・リサーチのFR64がある。
これはFR64Sのほうではなく、アルミニウム製のFR64を選ばれている。
こちらを瀬川先生は高く評価されていた。
一般に評価の高いステンレス製のFR64Sについては、「私の試聴したものは多少カン高い傾向の音だった。
その後改良されて音のニュアンスが変っているという話を聞いたが、現時点(1977年)では64のほうを推す次第。」
とステレオサウンド 43号に書かれている。
もう1本のほう、オルトフォンのRMG309については、こう書かれている。
「SPU(GおよびA)タイプのカートリッジを、最もオルトフォンらしく鳴らしたければ、
やはりRMG309を第一に奨めたい。個人的には不必要に長いアームは嫌いなのだが、
プレーヤーボードをできるだけ堅固に、共振をおさえて組み上げれば、しっかりと根を張ったようなに安定な、
重量感と厚みのある渋い音質が満喫できる。こういう充実感のある音を、
国産のアームで聴くことができないのは何ともふしぎなことだ。」
この時期、オルトフォンのRMG212が再発売されている。
かなり以前に製造中止になっていたのだが、
瀬川先生が、1975年に来日したオルトフォンの担当者に要請したのが、再生産のきっかけである。
こうやって読んでいくと、瀬川先生がアナログプレーヤーに求められていたものが、
すこしずつはっきりしてくるような気がする。