オーディオと「ネットワーク」(その8)
一度に4つに分けずに、まず2つに分け、さらに次の段階でさらに2つにわける方式を順次二分式という。
4ウェイのスピーカーシステムはJBLの4343をはじめ、いまとなってはかなりの数市場に登場しているが、
この順次二分式のデヴァイディングネットワークを採用したスピーカーシステムとなると、
もちろんすべてのスピーカーシステムのネットワークの回路図を見たわけではないから断言はできないものの、
その数はすくないのではないだろうか。
私の知る順次二分式のデヴァイディングネットワークを採用したスピーカーシステムには、Lo-DのHS10000がある。
1978年に登場した壁バッフルにとりつけて鳴らすことを前提として設計された、このスピーカーシステムは、
4ウェイ仕様が標準で、さらに特別仕様として5ウェイも用意されていた。
HS10000のクロスオーバー周波数は、630Hz、2.5kHz、4.5kHzとなっている。
通常の一度に4分割するネットワークでは、ウーファーには630Hzのローパスフィルター、
ミッドバスには630Hzのハイパスフィルターと2.5kHzのローパスフィルターによるバンドパスフィルター、
ミッドハイには2.5kHzのハイパスフィルターと4.5kHzのローパスフィルターによるバンドパスフィルター、
トゥイーターには4.5kHzのハイパスフィルターが、それぞれ設けられる。
これが順次二分式となると、まず2.5kHzで2つの帯域に分けられる。
そのつぎに630Hzで2つの帯域、4.5kHzで2つの帯域に分けられるわけだ。
一度に4分割するネットワークでは、ウーファーに入る信号は630Hzのローパスフィルターだけである。
トゥイーターも、4.5kHzのハイパスフィルターだけ、となる。
順次二分式では、この点が異る。
ウーファーに入る信号は、まず2.5kHzで分けられるわけだから、
この時点で2.5kHzのローパスフィルターを通り、さらに630Hzのローパスフィルターを通ることになる。
トゥイーターに関しても同じことがいえ、2.5kHzと4.5kHz、2つのハイパスフィルターを通る。