オーディオと「ネットワーク」(その9)
HS10000はウーファーは30cmの金属コーン型、上の3つの帯域を受持つユニットはドーム型を採用している。
ただしフロントバッフル面に対して各スピーカーユニットの振動板の形状が、くぼんでいたり(くぼみ効果)、
逆にふくらんでいたり(ふくらみ効果)することによる周波数特性の乱れをなくすために、
各スピーカーユニットには振動板前面に発泡樹脂を充填することで表面を、フロントバッフルと同一面としている。
このころ日本のスピーカーシステムには平面振動板がひとつの流行になっていたが、
テクニクスやパイオニア、ソニーが新たに平面振動板のスピーカーユニットを開発したのに対して、
Lo-Dは従来からあるスピーカーユニットをベースにして、
振動板の形状からくる欠点を解消するために手を加え平面化しているところが異るところだ。
この設計思想がエンクロージュアの形式にまでとりいれられているからこそ、
壁に埋め込んで使うことを前提としているわけである。
この、平坦化が、HS10000の設計思想ともいえ、
デヴァイディングネットワークに順次二分式を採用しているのも、やはりそのためである。
通常の一度に4分割する方式ではバンドパスフィルターがはいる帯域が2つあり、
その帯域幅も広くないことから、理論的には平坦な周波数特性が得にくい、といわれている。
HS10000のデヴァイディングネットワークの構成を自分で描いてみればすぐわかることだが、
バンドパスフィルターは存在しない。
たしかにミッドバスとミッドハイはローパスとハイパス、2つのフィルターを通ることになるが、
ミッドバスのローパスとハイパス、ミッドハイのハイパスとローパスは分岐点によって分けられている。
ミッドバスを例に取れば最初の分岐点のあとにミッドバスのローパスフィルターがあり、
次の分岐点のあとにミッドバスのハイパスフィルターがある。
同じ4ウェイのデヴァイディングネットワークでも、一度に4分割する方式では分岐点が1つしかないため、
ミッドバスとミッドハイへいく信号は、
バンドパスフィルター(ローパスとハイパス組み合わせたフィルター)を通ることになるわけだ。