BBCモニター考(LS3/5Aのこと・その6)
CDが登場する以前、アナログディスクがメインのプログラムソースであったころには、
LS3/5Aを鳴らすコツのひとつとして低域の適切なコントロールがあげられていた。
サブソニックによってLS3/5Aの小口径のウーファーがフラフラしていたら、
ただでさえ耐入力不足のところに、さらに不利な再生条件になってしまう。
ステレオサウンドでの組合せでQUADの405がよくとりあげられていたのも、このことが関係している。
405は大出力になると低域をカットするような設計になっている。
同じことは管球式パワーアンプについても、いえる。
アウトプットトランスを背負っていないOTLアンプは関係ないが、
アウトプットトランスの性格上、管球式パワーアンプの周波数特性をみると、
1W出力時と定格出力時とでは、低域のカットオフ周波数が、定格出力時ではどうしても高くなってしまう。
これはアウトプットトランスの性格上避けられないことでもある。
1982年にラジオ技術別冊として出た「集大成 真空管パワー・アンプ」の巻頭に、
管球式パワーアンプ15機種の回路図と実測データが載っている。
QUAD II、サンスイ AU111、ダイナコ MKIII、ダイナベクター DV8250、テクニクス 20A、40A、
デンオン POA1000B、フッターマン H3、マイケルソン&オースチン TVA1、マッキントッシュ MC275、MC3500、
マランツ Model 98、ラックス MQ36、MQ68C、SQ38FD。
測定を担当されたのは、オーディオノートの創設者、近藤公康氏。
これら15機種のなかでOTL方式なのは、テクニクスの20A、ラックスのMQ36、フッターマンのH3だけで、
残り12機種はすべてアウトプットトランスをもつ。
周波数特性は1W出力時、10W出力時、定格出力時の3つのデータが載っている。
出力に余裕があるアンプ、もしくは設計の新しいアンプでは、
!W出力時と10W出力時の周波数特性はほぼ同じか、すこしだけ低域のカットオフ周波数が上昇する傾向があるが、
小出力のものでは1Wと10W出力時でもずいぶんカットオフ周波数が違うものがあり、
定格出力時では200Hzあたりから低域のレスポンスが下降していくアンプもある。
ソリッドステートの優秀なパワーアンプの周波数特性と比較すると、
なんというひどい周波数特性なんだ、ということになりそうだが、
LS3/5Aのようなスピーカーシステムにとっては、これはむしろいい方向に働くこともある。