名器、その解釈(その4)
「名器」ときいて、私がすぐに思い浮べるオーディオ機器は、すでに製造中止になったものばかりである。
でも、これは私だけのこと、とは思えず、「名器」ときいて、最新製品を思い浮べる人は少ないように思う。
少なくともオーディオにおいての「名器」は、
新製品として世に登場して、それからある長さの期間を経たモノではないだろうか。
この、ある長さの期間は、具体的に何年と決まっているわけではない。
たとえばタンノイのウェストミンスターは1982年に登場している。
約30年が経ち、その間に、幾度かの改良が保護され、ウェストミンスター・ロイヤル/SEとなっている。
これは、もう名器と呼んでいい、と思いながらも、なぜか、私の中ではオートグラフは名器と素直に呼べても、
ウェストミンスターに対しては、抵抗感とまではいえないけれども、
素直に名器とは呼べないのはなぜかと、自分でも不思議に思っている。
ウェストミンスターに、とくに現行のウェストミンスター・ロイヤル/SEに、
オートグラフと比較して云々、というケチをつけるところはない。
フロントショートホーンのつくりにしても、オートグラフは直線的なホーンだったのに対して、
ウェストミンスターでは手間をかけて曲線に仕上げている。
搭載されているスピーカーユニットも、最初のウェストミンスターはフェライト磁石採用で、
この点ですこしがっかりしたのが正直なところだが、タンノイもそのことは理解していたのか、
現在のユニットは見事だと感心してしまう。
それにウェストミンスター・ロイヤル/SEは2006年登場とはいうものの、ポッと出の新製品ではなく、
その時点で24年の月日を経てきている。
オートグラフを名器と呼ぶのであれば、
ウェストミンスター・ロイヤル/SEを、名器と呼ばない理由は思い浮ばない。
にも関わらず、こういうふうに書いていっても、ウェストミンスター・ロイヤル/SEは、
私にとって名器として、いまのところ存在していない。