妄想組合せの楽しみ(その44・続余談)
実のところ、バックロードホーンのスピーカーシステムの鳴らしにくさは、
エンクロージュアにその理由があるということよりも、そのユニット構成に理由があるという視点からみていきたい。
たとえばタンノイのバックロードホーンを採用したシステム、
GRFやRHRのユニットはいうまでもなく同軸ユニットで、中高域はホーン型が受け持つ。
タンノイだけにかぎらず、バックロードホーンのスピーカーシステムの多くは、
中高域にホーン型をもってくるものが大半だといえよう。
そうすると、そこにはホーンの受持ち帯域の不連続が生じることになる。
つまりウーファーはたいていの場合、30cm、38cm口径のコーン型ユニット。
設計によって変化するものの、バックロードホーンが受持つ帯域は数百Hz以下の低音域。
タンノイが発表している値では、ウェストミンスターで200Hz以下となっている。
この値に関してはバックロードホーンの構造、大きさによって多少は変動するとはいえ、
それほど大きくは変化しない。
たとえば、もしウェストミンスターにフロントショートホーンがついていなかったら、どうなるか。
200Hz以下はバックロードホーンで、1kHz以上は中高域のホーンによって、
ホーンロードがかかっている帯域となり、中間の200Hzから1kHzの帯域に関してどうかといえば、
フロントショートホーンがなければホーンロードはかからない。
ホーンロードがかからない帯域が存在していることが問題なのではなく、
ホーンロードがかからない帯域が、ホーンロードがかかっている低域と高域のあいだにある、ということが、
バックロードホーンのスピーカーシステムの鳴らしにくさにつながっているのではないだろうか。
タンノイを例にとったけれど、同じことは他社のバックロードホーンのスピーカーシステムにいえることだ。
ホーンロードがかかっていない中間の帯域を、どう鳴らすかが、
実はバックロードホーンと中高域にホーン型を採用したスピーカーシステムの鳴らすうえでのコツではないだろうか。
そう考えると、JBLのD130をバックロードホーンにいれてしまったら、
いっそのこといさぎよく中高域にユニットを追加することなくD130だけで鳴らすのが、
気持ちいい音が得られるようにも思えてくる。
もしくはコーン型もしくはドーム型といったダイレクトラジエーター型のトゥイーターをもってきて、
ひっそり隠し味的に使うという手も考えられる。
もちろんフロントショートホーンを足すことができれば、鳴らし方も広がってくるであろうが……。