40万の法則が導くスピーカーの在り方(その17)
JBL以外にも、600Hzあたりにクロスオーバー周波数をもつスピーカーシステムは、他にもある。
アルテックのA5が500Hzで、A7は800Hz仕様と500HzのA7-500-8がある。
イギリスのヴァイタヴォックスのスピーカーシステムは、CN191、Bitone Major、Bass Binすべて、
クロスオーバー周波数は500Hzになっている。
これはすべてウーファーは15インチ・コーン型で、中高域にホーン型を使っている。
ただ、以上列挙したスピーカーシステムのなかでも、JBLのパラゴン、ハーツフィールド、
ヴァイタヴォックスのCN191などが500Hzにクロスオーバー周波数をもってきたのは、
エンクロージュアの構造にも起因している、といえる。
パラゴンもハーツフィールドもCN191も、正面からウーファーの姿を見ることはできない。
これらのスピーカーシステムは低域にもホーン型を採用しており、しかもホーンはストレートではなく、
折曲げ式であるため、中域以上の減衰が多くて、500Hzあたりが限度だったのだろう。
JBLのS9500、DD66000、アルテックのA5、パイオニアのExclusive 2402、2404などでは、
そういったこととは関係なく600Hzあたりにクロスオーバー周波数を設定している。
アルテックのA7は最初ホーンに811を使用していたから、おそらく800Hzのクロスオーバー周波数で出てきて、
のちにホーンをより大型の511に変更するとともにクロスオーバー周波数を500Hzに下げた
──というべきか、それとも500Hzに下げるために511ホーンにしたのか──A7-500-8を出している。
500Hzか800Hz──、どちらが630Hzに近いかというと同じである。
500Hzと800Hzの積は40万だからだ。
私が知る限り、アルテックの2ウェイ・システムに630Hz近辺のクロスオーバー周波数をもつものはない。
だからというわけでもないが、もし私がA7-500-8を鳴らす機会があれば、
630Hzで分割した音をぜひ試してみたい、と思っている。