40万の法則が導くスピーカーの在り方(その16・追補)
S9500は、JBLでは初の試みである仮想同軸配置を採用している。
仮想同軸という言葉が一般化してきたのも、ちょうどこのころであったし、
JBL以外にも仮想同軸配置のスピーカーシステムは増えていっていた。
S9500は2ウェイであったからウーファーを上下に配置し、その間に中高域のホーンを配置するという、
もっと基本的な仮想同軸の配置であったが、
他社製の3ウェイのシステムでは、ウーファーだけでなくスコーカーも2本使用して、
トゥイーターを中心に、その上下にスコーカー、ウーファーと配置していっていた。
この仮想同軸を最初に採用したメーカーはいったいどこなのか。
S9500の少し前に、日本ではレイオーディオがすでに採用していたが、
レイオーディオよりも前にイギリスのメリディアンが、
1985年ごろに発表したM2で、この仮想同軸配置を行っている。
私がこれまで聴いてきたスピーカーシステムの中で、最初に聴いた仮想同軸配置のスピーカーシステムがM2だ。
このときは仮想同軸という言葉がなかったこともあり、
M2のユニット配置については話題にのぼることはなかったように記憶している。
このM2以前に仮想同軸配置のスピーカーシステムはなかったのだろうか。
今日、偶然見つけたのが、ダイヤトーンのDSS-S91Mだ。
正確な発売日はいまのところ不明だが、1971年には現行製品だった。
DSS-S91Mときいても、どんなスピーカーシステムなのか、思い出せない方も多いだろう。
DSS-S91Mはスピーカーシステムの型番ではなく、セパレート・ステレオの型番だからだ。
セパレート・ステレオとはスピーカー、アンプ、チューナー(もしくはレシーバー)、
プレーヤーがラックに収められメーカー側でシステムとしてまとめられている装置一式のことだ。
DSS-S91Mのスピーカーは3ウェイ構成。
コーン型ウーファーを2本、フロントロードホーンのエンクロージュアにおさめ、
そのフロントロードホーンの開口部に中域のホーン型ユニットが、
2本のウーファーの間にくるように配置され、
トゥイーターは中域用ホーンの上にスペースをとって、ウーファーのホーン開口部の上部に取りつけられている。
だからトゥイーターに関しては厳密には仮想同軸とは呼びにくいところがあるが、
ウーファーとスコーカーの位置関係は、まさしく仮想同軸配置である。
そして、DSS-S91Mのスピーカーは、オールホーン型にもなっている。
いまのところ、私が探し出したなかで、もっとも古い仮想同軸配置のスピーカーである。