40万の法則が導くスピーカーの在り方(その10)
一度はボツにしたアイディアは、いまになってこうやって、しかも長々と書いているのは、
やっと実現可能なスピーカーユニットが登場したからである。
マンガーのBWTである。
マンガーのBWTを日本で最初に紹介したのは、ラジオ技術だった、と記憶している。
製品紹介ではなく、技術紹介の記事だった。
この記事を読んだころは、ベンディングウェーヴということについて知識がなかったため、
しばらく理解できなかった。
スピーカーの理想は、より正確なピストニックモーションという考え方にとらわれていては、
マンガーのBWTの本質的なところが、欠点にさえ思えてくる。
正直、このときは、なにか不思議なスピーカーユニットが登場したな、ぐらいの感想しか持てなかった。
それから数年、BWTが日本に登場することはなかった。
1996年、オーディオ・フィジックから、このマンガーのWBTを採用したスピーカーシステムが登場した。
Medeaである。
このMedeaは、BWTを正面にひとつ、左右にそれぞれひとつずつ、計3発使っている。
通常のコーン型のウーファーもBWTと同じように3発。
Medeaを記事で見たとき、不思議なユニットを使ったスピーカーシステムがやっと登場した、
でもすこし変った構成のスピーカーシステムとして、と思ってしまった。
だが、このスピーカーシステムに対する井上先生の評価は高い。
これは、これまでの常識はいったん捨てた上で聴いておくスピーカーシステムだ、と思い直した。
でも残念ながら、Medeaはいまだ聴く機会がない。