40万の法則が導くスピーカーの在り方(その9)
だが実際に市販されているスピーカーユニットの中から、
100Hzから4kHzまでをカヴァーできるモノはなかった、といっていい。
単に周波数特性(それも振幅特性のみ)でよければ、20cm口径の良質のフルレンジであれば、
一見使えそうな気がする。
この20cm口径のユニットのバックキャビティにどれだけの容積をあたえるかによるけれども、
100Hzという値はとくに問題なくカヴァーできる。
もちろんLCネットワークでウーファーとのクロスオーヴァー周波数が100Hzとなると、
ウーファー側のローパスフィルターを構成するコイルの値が大きくなりすぎて、
実際の製作面では別の問題が浮上してくるが、これはバイアンプ駆動という方法もある。
問題となるのは高域が果して4kHzまで、良好な指向特性を確保しながらカヴァーできるかということ。
結論をいえば、せいぜい2kHzどまりが限度となる。
もし仮に4kHzまで問題なくカヴァーできるユニットがあったとしよう。
もしくは10cm口径のフルレンジユニットを複数個(たとえば4発)使用するという方法もある。
それでも、今度はトゥイーターが問題となってくる。
JBLの2405はまず使えなくなる。2405は9kHzあたりからのトゥイーターである。
パイオニアのリボン型トゥイーターのPT-R7もきつい、
テクニクスのリーフ・トゥイーターの10TH1000も4kHzからだと無理がある。
ドーム型トゥイーターであれば、4kHzあたりから使えるものもあるが、
ここでも考えのベースとなっていたのは、瀬川先生の4ウェイ構想の記事であり、
そこに書かれていた内容のスピーカーを超える可能性を持つものとして考えていただけに、
正直、ドーム型トゥイーターでは、もの足りなさ、中途半端な印象がある。
そうなると、結局、瀬川先生の4ウェイの構成に行き着いてしまう。
ふたつの40万の法則を目ざそうとすると、1970年代後半のスピーカーユニットでは無理なことだった。
だから、この考えによるスピーカーシステム構想はボツにするしかなかった。