BBCモニター考(余談・続×十六 K+Hのこと)
累積スペクトラムを、私はスピーカーシステムの残響特性と捉えている。
いうまでもなく、そのスピーカーシステムを設置して鳴らす実際の部屋にも、
それぞれの部屋固有の、千差万別の残響特性がある。
残響特性が、スピーカーシステムにも、部屋にも存在しているために、互いに影響しあい、
部屋が変れば同じスピーカーシステムがまったく別物のように響くことだってある。
オーディオ・コンポーネントの間にも、相性はある。
それは使いこなしでどうにかある領域もあれば、やはりそれぞれの機器同士の相性は、
これからどんなにオーディオ機器が進歩していったとしても、
スピーカーの発音原理がいまのままである以上、スピーカーとアンプとのあいだには相性は残り続ける。
そういう相性とすこし性格の異るところで、部屋とスピーカーシステムの相性がある。
スピーカーシステム選びの難しさの要因のひとつが、ここにある、ともいえる。
極端な話、無響室で聴くのであれば、無響室とスピーカーシステムとの相性は存在しない。
だが、そんなところで音楽を聴くわけではない。
恵まれた環境であったとしても、部屋の広さは有限であり、有限である以上残響が生じる。
残響はその部屋の固有音であり、
累積スペクトラムで表示される音が鳴り止んだときのスピーカーシステムの固有音があり、
このふたつがどういうふうに干渉しているのか、くわしく知りたいところでもある。
置き場所を変えてみる、向きをこまかく調整していく──、そういったスピーカーシステムの調整とは、
スピーカーシステムの残響特性と部屋との残響特性との折り合えるポイントを見つけていくことでもある気がする。
相性のいい部屋とスピーカーシステムであればそれほど苦労しなくてもすむことを、
相性の悪い部屋とスピーカーシステムであれば、たいへんな苦労となっていく。
でも、どちらかがほぼ理想的な残響特性をもっている(実現できている)としたら、
この部屋とスピーカーのシステムの相性の問題は、ずっと軽減されるはずだ。