井上卓也氏のこと(その5)
同じスピーカーユニットを使っても、エンクロージュアが違えば、音は大きく変ってくる。
スピーカーユニットの性能、可能性が高いほど、エンクロージュアの役割の重要さは比例して高くなる。
スピーカーユニットとエンクロージュアの関係を語るのは、どれだけ言葉を尽くしても語り尽くせぬほど、
切っても切れぬ強固な関係といえよう。
特にタンノイにおいては、かなり以前から、
エンクロージュアの存在が大事であるとマニアの間で言われつづけてきた。
長島達夫先生は、タンノイのユニットは、エンクロージュアとの関係において、
サウンドボックスのダイアフラムの役割を果たすものと捉えられていた。
一般的なスピーカーとは異るアプローチによるエンクロージュアの考え方から、
タンノイのスピーカーシステムはつくりあげられている、ということだった。
いわばかなりやっかいで、扱い難いユニットといえるだろう。
このタンノイのスピーカーユニットを使って、システムとして成功した数少ない例が、
タンノイと同じイギリスのロックウッド社だ。
ロックウッドの製品には、38cm口径ユニットを2本縦に並べて搭載したMajor Geminiと、
1本だけのMajorという大型スピーカーと、
ブックシェルフサイズのアカデミー・シリーズがあった。