挑発するディスク(その13)
プロ用機器とコンシューマー用機器の違いは、音づくりの違いとも言える。
プロ用機器は、その器材がどういう用途でどういう状況で使われるのか、
そして求められる性能と信頼性の実現が、最優先されていることだろう。
そこには──あえて言うが──アマチュアの、思い入れは存在していない。
別項で書いているマークレビンソンの初期のアンプとは、
正反対の考え方からつくりこまれているともいえるだろう。
EMTもスチューダーも、もちろん試聴テストをくり返し行なっていることだろう。
だが、試聴よりも、まず研究・開発の比重の方がずっと大きいように感じられるのだ。
パーツの選択にしても、マーク・レヴィンソンは、おそらく入手できるかぎりのパーツを集めて、
ひとつひとつをひとりで聴き選んでいった──そう勝手に想像しても、間違っていないだろう。
EMTやスチューダーのパーツの選択は、まず信頼できるものを、というふうに感じられる。
求めている性能を満たしていて、なおかつ長期間に渡り安定していること。
この安定していることは、設計面に関しても言えることだ。
ひとつの機器をつくりあげるまでの試聴の回数も、マーク・レヴィンソンの方がずっと多いかもしれない。
だからプロ用機器の音を素っ気無く感じてしまう人がいても不思議ではない。
逆に言えば、それは堅実で信頼できる音づくりでもあり、
これこそEMT、スチューダーに共通する良さ、誠実さだ。