野口晴哉氏とWestern Electric 594A(その1)
別項で触れているように、野口晴哉氏の594A用の電源は、規定の電圧の六割程度まで落ちている。
原因はセレン整流器の劣化であろう。
励磁型スピーカーは、電源によって音が変化する。
バッテリーが一番というわけではない。
私が聴いた限りでは、タンガーバルブによる電源が圧倒的に凄かった。
けれど、あの音は家庭に収まるのか。
そんな疑問すらわいてくるほどに、すごい。
野口晴哉氏のリスニングルームならば、タンガーバルブの電源であっても、
無理なく置けるけれど、それを維持するのは──、
そのことを考えると、タンガーバルブの電源は、
魅力的であっても候補から外れていく。
私が考えている本命は、定電流電源である。
回路は定まっていても、すぐに手をつけられるわけではない。
特に今回は今月20日までに間に合わせる必要があるから、
窒化ガリウムのスイッチング電源を使うことにした。
今日、その電源を594Aに接いできた。
三人で聴いていた。
最初の音を聴いて、皆驚くしかなかった。
三十年以上前に594Aの音は何度か聴いている。
それが基準になっているから、昨年5月の音を聴いた時に、
まず電源を疑ったわけだ。
今回のスイッチング電源は、間に合わせのモノだ。
それでも凄い、という表現がこれほどぴったりの音は他にない──、
そう断言できるほどの「凄さ」だ。
今日は規定の電圧による594Aの凄さを確認しただけだが、
来週はきちんと鳴らしていく。
それでも年内に594Aの本領発揮とまではいかないだろう。
2026年、野口晴哉氏没後五十年を最初のゴールと決めている。