五条件(その8)
行間を読む前に、まずは活字になっているところをきちんと読む。
そのことがとても大事なことのはずなのに、
世の中は、行間を読むことが、
書いてある文字を読むことより高尚なことみたいに思われがちのようだし、
そう言われているように感じることがある。
行間を読んでいるから──、
なんと都合のよい言い訳だろう。
そういってしまえば、マウントがとれるとでも思っているのだろうか。
五味先生の「オーディオ愛好家の五条件」を読んで、
「真空管を愛すること」を「マッキントッシュを愛すること」に変換してしまった人は、
マッキントッシュ信者ともいえる人だった。
それはそれでいいのだが、怖いのは思い込みである。
思い込みの激しさである。
その人は、マッキントッシュというブランドを信じている(いた)。
おそらくマッキントッシュの製品ならば、どれも素晴らしいと思っていたに違いない。
信じることは、悪いことではない。
スピーカーの使いこなしにおいて、目の前にあるスピーカーを信じないことには、
何も始まらないといえるし、信じずにはじめたところで、中途半端な鳴らし方しかできない。
そして、そのスピーカーとながいつきあいもできない。
ゆえに、信じることは大事であっても、その人の場合は、何が違っていた。
五味先生は、「メーカー・ブランドを信用しないこと」を第一に挙げられている。