ブラインドフォールドテストとオーディオ評論(その3)
ブラインドフォールドテストで思っていることがある。
ずっと以前から、ブラインドフォールドテストをやるならば、
こういうやり方をなぜしないのか──、そう思っていることがある。
ステレオサウンド 230号の特集で、
小型スピーカーシステムのブラインドフォールドテストを行っている。
いわゆるブラインドフォールドテストのやり方である。
私が考えているのは、一歩進んだブラインドフォールドテストである。
スピーカーシステムは、鳴らし手の技倆が音になってあらわれる。
だからこそ(その2)で、
ブラインドフォールドテストでは何を聴いているのかをはっきりさせないと、
そしてそのことを読者にはっきりと伝えなければならない、と書いた。
230号でのブラインドフォールドテストでは、スピーカーシステムを設置しているのは、
編集部の誰かである。おそらく基本的には一人であろう。
セッティングのための持ち運びは他の人も手伝うだろうが、
セッティングに関しては、一人の編集者がやっていることだろう。
それはそれでいいのだけれど、一歩進めるとしたいのは、
鳴らし手を一人にしないことだ。
三人くらいいたほうがおもしろくなると考えている。
試聴スピーカーが二十機種あれば、三人がすべてのスピーカーをセッティングして鳴らす。
だからブラインドフォールドテストに参加したオーディオ評論家は、
六十機種のスピーカーの音を聴いたのと同じことになる。
こういう面倒な、そしてしんどいブラインドフォールドテストは、
どこも誰も行っていないはずだ。