ワイドレンジ考(その54)
エソテリックのサイトではなくタンノイのサイトで、ウェストミンスターのスペックを見ていて気づくのは、
CROSSOVER Frequency(クロスオーバー周波数)のところに、
200Hz acoustical, 1kHz electrical とあるところだ。
1kHzに関しては説明は必要ないだろう。内蔵のネットワークによる。
200Hzは、ウェストミンスターのエンクロージュアの構造によるもので、
200Hz以下はバックロードホーンが受け持つ帯域となる。
オートグラフは、350Hz以下をバックロードホーンが受け持つ、とカタログにあったと記憶している。
ウェストミンスターにしてもオートグラフにしても、
このバックロードホーンの開口部はエンクロージュアの左右に設けられており、面積にするとかなり広い。
スピーカーユニットに同軸型を採用し、音源の凝縮化をはかっているのに、
200Hz(もしくは350Hz)以下の低音に関しては反対の方向をとっているといえる。
これが、ほかのスピーカーシステムでは得られない
オートグラフ(ウェストミンスター)ならではの音の世界をつくっている要素になっているわけで、
オートグラフでは20Hzまでバックロードホーンによるホーンロードがかかっているように、
カタログからは読みとれる。
ただいかなる条件下において20Hzまでホーンロードがかかっているのかというと、はっきりしない。
おそらく実際に堅固なコーナーにきちんと設置して、
しかも壁の一辺が十分な長さを持っているときに限るのではないか、と思う。
正直、この辺になると実際にコーナー型(それもコーナーホーン型)のスピーカーシステムを、
自分の手で、しかも部屋の環境を変えて鳴らした経験がないため、推測でしかいえないもどかしさがあるが、
コーナーホーン型が理屈通りに壁をホーンの延長として使っているのであれば、間違いはないはずだ。
結局、このところがオートグラフとウェストミンスターの、(少なくとも私にとっては)決定的な違いである。
ウェストミンスターの低域が-6dBではあるものの18Hzまでレスポンスがあるのは、
タンノイがスペックとして発表している以上、疑うことではない。
ただそれはレスポンスと測定できることであって、果してウェストミンスターのバックロードホーンが、
18Hzまでホーンロードがかかっていることの証明にはなっていない。