管球式プリメインアンプのデザイン(その1)
「真空管アンプの存在(KT88プッシュプルとタンノイ・その16)」に、
Tadanoさんのコメントがあった。
コメントの最後に、
《ところで宮崎さんに質問したいのですが、宮崎さんの思う真空管プリメインアンプのベスト・デザインを、ぜひ教えてください。また、その理由についてもお聞かせいただけると嬉しい限りです!》
とある。
無視するわけにはいかないとおもいながらも、この質問は難しい。
別項「プリメインアンプとしてのデザイン、コントロールアンプとしてのデザイン」、
ここでのテーマと関係してくることだし、
《真空管プリメインアンプのベスト・デザイン》でもある。
Tadanoさんのコメントを読んだのが昼過ぎ。
それからいままであれこれ思い浮べてきたけれど、
《真空管プリメインアンプのベスト・デザイン》は、いまのところない、としかいいようがない。
けれど好ましいと思う管球式プリメインアンプがないわけではない。
これまで難度も書いているように、私が最初に読んだステレオサウンドは41号。
その次の42号は、プリメインアンプの特集だった。
53,800円(オンキョーIntegra A5)から、
195,000円(マランツModel 1250)までの35機種がとりあげられていた。
この35機種のなかで、オーディオに興味を持ち始めたばかりの中学三年生だった私が、
デザイン的に、他のアンプとは明らかに違うと感じたのは、
オンキョーのIntegra A722nIIとラックスのSQ38FD/IIの二機種だった。
管球式プリメインアンプはいうまでもなくSQ38FD/IIであり、
Integra A722nIIはソリッドステート(半導体)アンプだった。
REPLY))
ご回答ありがとうございます。なにより、このページに「真空管プリメインアンプのデザイン」という項目が追加されたこと。それを嬉しく感じます。私にとって、それは最も嬉しい回答なのです。今後の楽しみがまた増えました。この恩恵については感謝しきれません。
宮崎さんの思われる、好ましい管球式プリメインアンプとして、ラックスマンの38FDmkIIが挙げられていたこと、私も非常に同感という心境です。実は、私もこのアンプには大変な好感を持っているのです。というのは、子供のころからの友人の家が、ⅢLZmk2を38FDを鳴らしていたものですから、このアンプの魅力はよく知っているのです。
私は1983年生まれですから、ちょうどオーディオブームを経過した頃に生まれています。ですので、こうした家庭が多くあったように思います。つまり、ステレオを中心に据えたインティメイトな家庭という意味ですね。当時は、歩いていける距離にステレオを持った家というのが何軒もありました。そういった所でのオーディオの体験というのが、私の音楽の原体験になっております。このⅢLZと38FDの置いてある書斎には、マルクス全集や百科事典などがずらりと並べられており、中々風格のある部屋だったのです。ですから、このアンプに対しては、何か、知性の象徴というようなイメージを持っております。
おそらく、80年代生まれの世代の人というのは、多くの方がこういった形でオーディオ体験を重ねてきたのではないかと思うのです。それは、今思えば「ステレオサウンド」を代表とするオーディオ誌によって、日本全体に隆盛していた音楽文化だったと思うのです。70年代のステレオサウンドを集めるようになり、それを読み込むうちに、そのことがよく分かるようになりました。もちろん、そのきっかけを作ってくださったのは、インターネット上における宮崎さんの活動に他なりません。
ところで、どういうわけかは分からないのですが、私は真空管プリメインアンプというものが大好きなのです。
先に述べた38FDの書斎では、オーディオラックなど使わず、オーディオを非常にライトにあつかっておられました。
人間というのはどうしても、真理を追究するあまりでしょうか、過剰な収集癖などに陥りがちなものですね。そうこうしているうちに、いつのまにやら本質を見失ったコレクターになってしまう。そのようなことが往々にしてあるものです。ところが、真空管プリメインアンプのあるスペースには、そういった印象がない。むろん、これは私のイマージュですが、もしかしたら私は、真空管プリメインアンプというものに対して、失われた中産階級という情景を見ているのかもしれない。そんなような事を考えていました。
そういうわけですので、「真空管プリメインアンプのデザイン」この新しい連載も含め、今後とも楽しませていただきたいと思います。ありがとうございました。