ワイドレンジ考(その50)
HiFi year bookにスタジオ・モニター用と明記されていても、
それはタンノイがいっていることをそのまま載せたのか、それとも編集者がそう判断したのか、
それとも実際に使用例があるのかを確認してなのか、そのへんのことははっきりしない。
それにタンノイ・オートグラフが、
実際にスタジオでモニタースピーカーとして使われた例があるのかどうかはわからない。
ただ一部の人が、コーナー型スピーカーををスタジオモニターとして使うわけはない、ということはない。
いまの感覚からすれば、たしかにスタジオモニター用としてコーナー型スピーカーシステムを採用することは、
ないと断言してもいい。
けれどオートグラフは1953年に登場したスピーカーシステムである。
この時代、スタジオではどんなふうにスピーカーを設置していたかというと、
BBCモニターのLSU/10(LS5/1以前のスピーカー)がおかれている写真をみたことがあるが、
ミキシングコンソール(というよりも調整卓といったほうがぴったりくる)の横、
部屋のコーナー近辺に1台設置してある。
モノーラル用だからモニタースピーカーは1台。その1台をミキサーにとって真正面におくと、
録音ブースとのあいだをしきるガラス面をふさぐかっこうになり、まずい。
だからというわけでもないだろうが、比較的に邪魔になりにくいコーナー近辺に置かれたのだろうか。
この時代のスタジオの写真が他にもあれば、当時のスピーカーの設置状況がもうすこしはっきりとしてくるのだが、
少なくともミキサーの正面に置かれることはなかったといえよう。
そしてこの時代は調整卓の幅も狭い。スタジオのコーナーは自由に使えたのかもしれない。
となると、コーナー型のモニタースピーカーというのが、実際にあっても不思議ではない。
スタジオモニターにコーナー型はありえない、というのは、あくまでもいまの感覚にすぎない。