所有と存在(とディスクラック・その1)
ADK(朝日木材加工)のCDラックがある。
SD-CD1BDXという製品である。
このSD-CD1BDX(八段重ね)が、もうじきやって来る。
SD-CD1BDX一段に、約73枚のCDが収納できる、とある。
73枚の八段だから、584枚ほどのCDを収納できることになる。
600枚弱のCD。いまでは多くない数字どころか、少ない数字といえる。
学生だったころ、壁いっぱいのディスクのある生活に憧れたこともある。
ステレオサウンドで働くようになり、六本木にWAVEができてからというもの、
頻繁にCD、LPを買っていた。
そんなふうにして買っていると、千枚ぐらいはすぐに集まる。
千枚ほどでは壁いっぱいには、まだまだである。
世の中には、千枚の一桁上、二桁上の枚数のコレクションの人も少なくない。
なのに600枚弱しかおさめられないCDラックについて書いているのは、
このくらいの枚数が、ちょうどいいのかもしれない、と思うからだ。
ほんとうに大切で、くたばるまで聴き続けたい音楽(ディスク)というのは、
そう多いものではない。
壁いっぱいのディスクといっても、狭い部屋と広い部屋とでは、
壁いっぱいのディスクといっても、その枚数は多く違ってくる。
壁いっぱいということに、もう憧れはない。
TIDALがあるから、ということも関係している。
TIDALがなかったとしても、心から愛聴盤とすなおにいえるディスクは、
どんなにながく音楽を聴いてきていても、このくらいなのではないのか。