ケンプだったのかバックハウスだったのか
文藝春秋 2月号を読んだ。
五味先生が最期に聴かれたレコードは、バックハウスのベートーヴェンの作品111、とある。
五味先生の追悼記事が載ったステレオサウンド 55号の編集後記に、原田氏は、
「最後にお聴きになったレコードは、ケンプの弾くベートーヴェンの111番だった」と書かれている。
新潮社から出た「音楽巡礼」に、五味先生と親しくお付き合いされていた南口氏も、
ケンプのベートーヴェンがお好きだった、と書かれていたので、
今日までずっとケンプのベートーヴェンを最期に聴かれたものだと思ってきた。
ケンプは病室で最期に聴かれたのかもしれない、バックハウスは通夜でかけられたものかもしれない。
まぁ、でも、どちらでもいいような気持ちも、正直にいえば、ある。
ケンプのベートーヴェンも、バックハウスのベートーヴェンも、代わりなんて思い浮かばない。
音楽とは、本来そういうものだということを想い起こさせてくれる。
どちらにも、自恃がはっきりとある。