オリジナルとは(その1)
何度か書いているからおわかりのように、私は手持ちのオーディオ機器にわりと手を加える方である。
「完成品に手を加えるぐらいなら、一から自作すべき」だという声は、昔からある。
これを否定する気はないし、真に完成品と感じるモノであれば、手を加えたりはしない。
それに手を加えるのが好きなわけではなく、できることならそのまま使っていきたい、とは思っている。
けれど、実際には、「完成品」と呼べるモノが、いったい過去を含めてどれだけあったのか、と反論したくなる。
それでも「オリジナルは尊重すべき」という声がある。
この「オリジナル」とは、いったい何を指すのか。
原音再生における「原音」と同じくらい、はっきりしているようであって、じつのところ曖昧でもある。
ステレオサウンド 60号の「プロが明かす音づくりの秘訣」の1回目に菅野先生が登場されている。
この記事をご覧になった方はご存知のように、菅野先生はJBLの075に手を加えられている。
まずホーンは砲金の削り出しに交換されていて、ダイアフラムは075用のではなく2405用にされている。
さらにバネ式のスピーカーターミナルを嫌って、バリアー・ターミナルとなっている。
JBLのスピーカーユニットもそうだが、アルテックも、バネ式のスピーカーターミナルを使っている。
ユニットの、実にしっかりした造りからすると、この部分は実にお粗末、というか、貧弱に感じられる。
スピーカーケーブルも、細いタイプのものだけ、となる。
それでも音質的に劣化の少ないつくりであればいいのだが、
バラしてみれば、どうみても劣化の度合は大きいとしか思えない。
高性能のスピーカーユニットであればあるほど、信号を受ける端子の音に対する影響には敏感であるはずなのに、
この程度のつくりである。
このタイプのターミナルはスピーカーケーブルをバネの力でくわえ込む。
ネジ式であれば、振動源であるスピーカーユニットについているわけで、
長い間の使用において、ネジがゆるんでしまうことが考えられる。
その点、バネ式であれば、まずゆるむことはない。
おそらく、このバネ式のターミナルが使われているのは、こんな理由からではないだろうか。