2021年をふりかえって(その20)
「私のオーディオの才能は、私のためだけに使う。」
以前にも書いていることのくり返しなのだが、本気でそう思っていた時期があった。
30代前半のころだから、いまから二十年以上の前のことだ。
親しい友人にも、そう言っていた。
本気だったのに、そのとおりにしなかったきっかけは、すでに書いている。
川崎先生のDesign Talkと出逢っていなければ、読みつづけていなければ、
ずっとこのままきていたかもしれない。
それに瀬川先生の著作集をなんとかしたい、というおもいが、
ステレオサウンドを離れてからずっとあったことも、深く関係している。
30代後半のころ、インターネットが普及の兆しを見せ始めていた。
ウェブサイトを自分でつくるアプリケーションも出始めてきた。
このことがなければ、もしかすると、じっとそのままで、
「私のオーディオの才能は、私のためだけに使う。」といい続けていたかもしれない。
いくつかのきっかけが重なっての2000年8月にaudio sharingの公開だった。
公開後も、いろんなことがあった。
もしaudio sharingをつくっていなかったら、公開していなかったら──、
オーディオの才能を自分のためだけに使っていたら──。
audio sharingの公開後の人との出逢い。
ある人と出逢い、その人との出逢いで、また別の人と出逢う。
六次の隔たり、という仮説の実感でもある。
そうやっての2021年10月7日の巡り逢せは、
オーディオを続けてきてよかった、と心底から実感している。