Date: 4月 7th, 2011
Cate: 複雑な幼稚性
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「複雑な幼稚性」(その8)

どうすれば、書き手と読み手のあいだに共通認識を築いていけるのか。

これはもう書き手が、とにかく書いて書いて、書き尽くすぐらい気持で書くことからしか始まっていかない。
新製品紹介でも、スピーカーやアンプのなどの試聴記だけでなく、
オーディオ、それに音楽に関する随筆、さらにできれば音楽、オーディオから離れた話題についても、
ときには書いていくことで、
読み手は、それらを読み重ねていくことで、ある特定の書き手についての印象が形成されていく。

その書き手がどういう音楽を好み、どういう音で、どういう環境で聴いているのか──、
こういう基本的な事柄ですら、いまの書き手の中にははっきりと読み手側に伝えていない人がいる。
書き手側は一度書いたから、と思いがちだが、読み手側は、必ずしも過去の記事にまで遡って読む人ばかりではない。
仮に過去の記事を読んだ人すべてが記憶しているわけでもない。

大事なことはくりかえし書いていく、しかない。
書いたからいってすべてが伝わるわけではないけれど、書かなければまったく伝わらない。

だけど……、という反論が返ってくるかもしれない。
随筆を書いていきたいけれど書く場所がない。
編集部から、そういう以来が来ない。

こんないいわけが通ったのは、ネットが普及する前まで。
いま、ブログならパソコンとネットに接続できる環境があれば、すぐにもつくれる。
すぐにでも書く場所を得られる。
しかも、この「書く場所」はページ数の制限がない。
書きたいことを書きたい分量で書ける。
なにも長く書けるだけがメリットではなく、たった1行でも、いま伝えたいと思ったことがあれば、
すぐにでも書いて公開できる。

オーディオ雑誌では、編集部から与えられたテーマと分量がある。長くすぎる文章は削られるし、
たった1行だけの文章も拒否される。

いまオーディオ評論家の肩書きで仕事をしている人のどれだけがブログを利用して、
読み手との共通認識を築いてくことに積極的な人がいるのか。

ここでも、こんな反論があろう。
われわれ(オーディオ評論家を名乗っている人たち)は、プロの書き手である。
だからお金にならない文章は書かない、と。

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