「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(理解についての実感・その21)
(その17)で、
《読者は雑誌に「私を気持ちよくさせて」ということを求めはじめたのではないのか》
と書いている。
(その17)は四年ほど前だが、いまもそう思っている。
ステレオサウンドもそういう編集方針なのかも──、とも思う。
今回のステレオサウンドの特集「オーディオの殿堂」は、まさしくそういう企画である。
自分が愛用しているオーディオ機器が、「オーディオの殿堂」入りをしたのであれば、
よほど捻くれた人でないかぎり、やはりうれしいはずだ。
苦労して手に入れたモノであれば、よけいにうれしいだろう。
私が以前愛用していたオーディオ機器のいくつかも、
「オーディオの殿堂」入りをしているようだ。
223号を買った友人が、
こんな機種が選ばれているよ、と教えてくれたなかに、
以前使っていた機種がいくつかあった。
サンスイのプリメインアンプ、AU-D907 Limitedも入っている(らしい)。
入っているのか、と思った。
他の機種は選ばれて当然のモノだったから、
AU-D907 Limitedが選ばれているのは意外だったし、それだけにうれしいな、と思ってしまった。
一方で、なぜ、このモデルが選ばれていない、と思う人も当然いるわけだ。
そういう人の気分は害している企画ともいえる。
とにかく殿堂入りした機種を使っている読者の気持をよくさせているのは、
そうであろう。でも、理解を深めようとは考えていないように感じている。
別項「40年目の4343(オーディオの殿堂)」で、
三浦孝仁氏の4343の文章について触れた。
三浦孝仁氏の、この文章は4343についての理解を深めることはまったくなかったし、
4343をいまも鳴らしている人、昔愛用していた人の気持をよくしただろうか。