グレン・グールドのモーツァルトのピアノ・ソナタ
13歳の秋、「五味オーディオ教室」に、こうあった。
《モーツァルトの、たとえば〝トルコ行進曲〟の目をみはる清新さ》──、
グレン・グールドのことだ。
まだ、この時は、グールドのトルコ行進曲は聴いていなかった。
《目をみはる清新さ》、
この時は勝手に、こんな演奏なのかしら、と想像していた。
実際のグールドの演奏は、聴きなれていた演奏とは大きく違っていたし、
想像とも違っていた。
それからずいぶん月日が経った。
くり返し聴いた日々もあったし、
まったく聴かなくなったころもあった。
SACDでも出たので手に入れた。
SACDでも聴けるし、いまではTIDALでMQA Studioでも聴ける。
ついさっきまで聴いていた。MQA Studioで聴いていた。
聴いていて、いままで感じたことのないことを考えていた。
なにかものすごいつらい状況に追いやられた時、
音楽を聴く気力すらわいてこない時、
とにかく尋常ではない時に聴ける音楽は、こういう音楽なのではないか、と。