月刊ステレオサウンドという妄想(というか提案・その10)
傅 信幸氏の名前を知ったのは、1970年代後半の無線と実験においてだった。
ハンダによる音の違いの実験記事だった。
それ以前も無線と実験に記事を書かれていたのかもしれないが、
このハンダの記事は、ここまでやるのか、と意味で印象に残っている。
ハンダ付けがどういう現象なのかを理解していれば、
この試聴方法が必ずしも、実際のハンダの音を聴くこととイコールなのか、
疑問がないわけではないが、とにかく記事のおもしろさ、
それだけでなく試聴用のケーブル作りまで、自身でやるというところも、
無線と実験の記事のようでいて、それまでの記事とは違うところも感じさせていた。
その傅 信幸氏は少ししてからステレオサウンドの誌面に登場。
カセットデッキのノイズリダクション、dbxの一連の製品の試聴など、である。
一機種ごとの、いわゆる試聴記という形ではなく、
巻末に地階ところでの掲載ではあったが、かなり力の入った記事(文章)であった。
あのハンダの人が、ステレオサウンドに登場なのか、と期待して読み始めた。
けれど何度か読み返しても、最後までスムーズに読み通せない。
手抜きの文章だったからではない。
じっくり時間をかけての文章だった、と感じられる。
けれど読んで行くと、流れにのれないとでもいおうか、
もういいや、という感じになってしまった。
最初は聴く音楽のジャンルが違うからなのか、と思った。
けれど、どうもそうではないようだ。
当時は高校生で、周りにステレオサウンドを読んでいる友人はいなかった。
ほかの人がどうだったのかは、わからなかった。
いま読み返すと、はっきりとなぜだったのか、わかるのだが、
それはここで書くことではない。
その傅 信幸氏の文章を、おもしろいと感じたのは、
FM fanに二号連続掲載の記事だった。