バックハウス「最後の演奏会」(その18)
「骨格のある音」、「骨格のしっかりした音」、
こういうことを考えるようになったのは、これもまた「五味オーディオ教室」からである。
「五味オーディオ教室」は、肉体のない音ということから始まっていた。
肉体のある音とは、どういう音なのか。
「五味オーディオ教室」を手に取ったばかりの13歳の私には、よくわからなかった。
ただ、世の中に肉体のある音(肉体の復活を感じさせる音)とそうでない音とがある、
その事実だけである。
肉体の復活は、音像定位がしっかりと再現されていれば、
それがそうなわけではない。
よくいわれる音のボディを感じさせるのも、
必ずしも肉体の復活を感じさせる音ではないはず、と私は受けとっている。
正直なところ、五味先生に訊きたかったことのひとつである。
けれど、五味先生は1980年に亡くなられている。
あえなかった。
だから、考え続けていくしかないわけで、例えば人物画。
ここにも骨格のある人物画と、骨格を感じさせない人物画とがあるように感じている。
どんなに写実性の高い人物画であっても、
その絵が必ずしも骨格のある(感じさせる)とはかぎらない。
ここでの人物画は服を着た人の場合である。
それでいても、骨格の感じられる人物画があるし、そうでないものもある。