オーディオの「本」(近所の書店にて・その9)
そういえば、どうだったんだろう……、と書きながら思っていた。
私が、無線と実験、ラジオ技術、電波科学などを初めて書店で手にした時、
これらの雑誌は、どのコーナーに置かれていただろうか。
はっきりと記憶に残っていないが、オーディオのコーナー、
つまりステレオサウンドやその他のオーディオ雑誌と同じコーナーにあったはずだ。
そのころは技術誌のコーナーを見ることはやっていなかったのだから。
無線と実験がオーディオ雑誌のコーナーがあったことで、
私は早い時期に、伊藤先生のアンプの記事とであえた。
このことは、いまふり返ってみると、ひじょうに幸運だった、といえる。
中学のころ、無線と実験を知らなければ、
伊藤先生のアンプを知るのは、数年遅れていたからだ。
サウンドボーイに掲載されたEL34のプッシュプルアンプの記事まで待たなければならなかった。
無線と実験、ラジオ技術などに発表される自作の真空管アンプに対する評価は、
けっこう人によって違う。
私は、伊藤先生のアンプ以外はない──、そう断言するくらいに、
無線と実験に載っていたEdのプッシュプルアンプの姿に一目惚れした。
そんな私は、シャーシーの厚みは伊藤アンプの50mmが基準である。
けれど人によっては、50mmは厚い、という。
そういう人は淺野勇氏の作られるアンプ、
40mmのシャーシーがスマートでかっこいい、という。
私は逆に、薄い、と感じてしまう。
最初に、どのアンプ(どの人のアンプ)に惚れたかで、
このへんの感覚は違ってくるのだろうか。