菅野沖彦氏のスピーカーについて(その7)
振動板のピストニックモーションということでいえば、コンデンサー型スピーカーもより理想に近い。
ゴードン・ガウはXRT20の開発過程で、コンデンサー型によるトゥイーター・コラムを試した、とのこと。
コンデンサー型は基本的には平面振動板だから、そのままでは平面波が生じる。
XRT20のトゥイーター・コラムが目指したシリンドリカルウェーヴには、そのままではならない。
けれど、ビバリッジのSystem2SW-1は、これを実現している。
System2SW-1はステレオサウンド 50号に登場している。
XRT20は60号。ビバリッジのほうが先に出ている。
しかもSystem2SW-1の前の機種でもビバリッジはシリンドリカルウェーブを実現しているから、
ゴードン・ガウが、ビバリッジのこの手法について全く知らなかったということは、可能性はしては小さい。
シリンドリカルウェーブということにだけでみれば、ビバリッジの手法のほうが、
XRT20のソフトドーム型トゥイーターを多数使用するよりも、ずっとスマートだし、理想には近い。
けれどXRT20のトゥイーター・コラムはコンデンサー型の採用をあきらめている。
いくつかの理由は考えられる。
ウーファー、スコーカーがコーン型であるために、音色的なつながりでの整合性への不満なのか、
オリジナルを大事にするというアメリカ人としては、
他社のマネは、それがどんなに優れていてもやらない、ということなのか。
あとは、昔からその時代時代において、ハイパワーアンプを作り続けてきたマッキントッシュとしては、
コンデンサー型のトゥイーター・コラムでは最大音圧レベルでの不満が生じるのか。
なにが正しい答なのかはっきりしないが、
ゴードン・ガウが求めていたのは、理想的なシリンドリカルウェーブではなく、
結果としてシリンドリカルウェーブになってしまったような気がする。
それに、より理想的なピストニックモーションでもなかった、といえよう。