複数のスピーカーシステムを鳴らすということ(その24)
「七色いんこ」の主人公、七色いんこは、代役専門である。
著名な役者(しかも老若男女関係なく)の代役も完璧にこなすほどで、
天才的代役専門の役者という設定。
「七色いんこ」の連載期間は、一年ちょっとだった。
それほど人気を集めていたわけでもなかったのだろう。
それでも「七色いんこ」の三十年後を描いた作品が、
別の作者によって描かれているし、二回舞台にもなっていることが、
検索してみるとわかることから、評価は低くなかったようにも思う。
「七色いんこ」が連載されているころ、
すでにオーディオにどっぷりはまっていた。
それに、そのころはスピーカーを擬人化して捉えることを頻繁にやっていた。
でも、当時は、スピーカーを役者として捉えることはしていなかった。
もしそうしていたら、「七色いんこ」の捉え方も、ずいぶん違ったものになってきただろう。
代役専門の役者という設定が、
いかにも、ある種のスピーカーシステム的だと思うからだ。
あらゆる色づけを排し、高忠実度をめざして開発されていったスピーカーは、
ある意味、代役専門の役者的ではないだろうか。
七色いんこは、代役を、ほぼ完璧にこなす。
それは誰かの演技を、ほぼ完璧にコピーしているから、ともいえる。