MQAで聴きたいアルゲリッチのショパン(その2)
“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”は、ピアノ・ソナタの3番から始まる。
クラシックをほとんど聴かない人であっても、
ショパンのピアノ・ソナタ3番の冒頭は、どこかできいたことがあるはずだ。
その冒頭が、誇張なしに目が覚めるように鳴ってきた。
演奏がすごいだけでなく、音もいい。
1965年の録音とは思えなかった。
アルゲリッチの演奏テクニックはすごいのだけれども、
聴いていて芸達者というふうにはまったく感じない。
別項で一流と二流について書いているところだけれど、
ここでもそのことをひしひしと感じることになる。
プロのピアニストとして十分なテクニックをもっていて、練習を怠らない人、
音楽の理解も十分にあっても、それだけでは到達できない領域があることを、
“THE LEGENDARY 1965 RECORDING”は、はっきりと見せつける。
ピアノを弾けない私が聴いてもそう感じる。
ピアニストならば、どう感じるのだろうか。
ピアノを弾けない私とプロのピアニストのあいだには隔絶した壁があるわけだが、
大半のプロのピアニストとアルゲリッチとのあいだにある壁は、
それよりもずっとずっと隔絶しているのではないだろうか。
優れた指導者の元で、演奏を磨いていく。
ピアノ教育の現場がどうなのかは知らないが、
アルゲリッチがピアノを習っていた時代と現在とでは、そうとうに違っているのではないか。
トレーニング法はずっと進歩している、と思う。
だからこそ、トレーニングだけでは絶対にこえられない壁があることを、
プロのピアニストならば実感しているのではないのか。