Date: 7月 26th, 2020
Cate: 日本のオーディオ
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S氏とタンノイと日本人(その7)

ステレオサウンド別冊「世界のオーディオ」のタンノイ号に、
タンノイのリビングストンと瀬川先生の、こんなやりとりが載っている。
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瀬川 実はウインザーとバッキンガムについては、申しわけないのですが、われわれ少し認識不足だったんです。というのは、1年前に発表されたにもかかわらず、品物がほとんどなくて、テスト用のサンプルを借り出すことも不可能だったものですから、われわれとしても勉強不足の点が多々あります。
リビングストン タンノイとしても、まさにバッキンガムがロールスロイス、ウインザーがジャガーのつもりなんです。イギリスでもロールスロイスは18ヵ月、ジャガーは9ヵ月待たなければいけないという状態です(笑)。タンノイとしても、その点は申しわけないと思っております。
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積層構造のリジッドなつくりのエンクロージュアの製造がたいへんだったのだろう。
リビングストンによれば、バッキンガムとウインザーは、
イギリスではスタジオモニターとして、カナダではカナダ放送局が採用。

タンノイとしては、当初世界市場で売れても月12台くらいという予測だったそうだ。
それが実際には月40台くらいのペースで注文がくるため、
バックオーダーがたまっていく、ということだった。

以前、「ワイドレンジ考」でキングダムについてふれたさいに指摘しているように、
このバッキンガムの設計思想をより徹底したところでの、1996年に登場したKingdomである。
ことわっておくが、現行製品のKingdom Royalのことではない。

そんな存在であったバッキンガムは、51号の読者の選ぶベストバイで、
わずか9票(0.3%)で37位でしかない。
51号では、アーデンは3位、オートグラフは5位に入っている。

バッキンガムはスピーカーの総テストにも登場していない。
ステレオサウンドでも、取り上げられることはゼロだったわけではないが、
タンノイのフラッグシップモデルにしては極端に少なかった。

聴く機会がなかっただけに、バッキンガムの評価が気になっていたのだが、
1979年ごろには製造中止になって、横型のモデルだけになってしまったし、
さらにSuper Red Monitor、Classic Monitorというモデルが登場した。
どちらも465,000円(一本)。アーデンの約二倍の価格での登場である。

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