オーディオと「ネットワーク」(post-truth・その5)
ある人がCDプレーヤーを、数ヵ月前に買い替えた。
その人は、重量級のCDプレーヤーを購入した、と喜んでいる。
その人が、それまで使っていたCDプレーヤーよりも重量があるから、
その人にとっては確かに重量級といえる(感じる)のだろうが、
重量という数値だけで判断するならば、傍からみれば、それほど重量級ではない。
かといって軽量級ではないのも確かだから、本人が喜んでいることに水を差すことはいわずにいた。
でも、その人がこんなことをいった。
「重量級のCDプレーヤーは、回転の慣性質量も大きくなるんですかね」
CDプレーヤーでもターンテーブル(スタビライザー)をもつモノがある。
エソテリックの製品がそうだし、
47研究所の4704/04 “PiTracer”もそうだ。
古い製品では、パイオニアがPD-Tシリーズもそうだった。
これらの製品であれば、ターンテーブルプラッターの分だけ慣性質量は増す。
けれど、それ以外の大半のCDプレーヤーは、センターをクランプしているだけでディスクを回転させる。
CDプレーヤー本体の重量がどれだけあろうと、
ディスクの回転に関する慣性質量にはまったく関係ない。
それにCDプレーヤーにおいて、
つまり線速度一定の回転系において、慣性質量が増すことのデメリットはある。
もちろんターンテーブルプラッターをもつことで、
ディスクの回転のブレを抑えられるというメリットもある。
「重量級のCDプレーヤーは、回転の慣性質量も大きくなるんですかね」の発言には、
その場にいた複数の人から、つっこみがあった。
その人は「重量級のCDプレーヤーは、回転の慣性質量も大きくなるんですかね」であって、
「重量級のCDプレーヤーは、回転の慣性質量も大きくなるんですよね」ではなかった。
いちおう疑問形になっていたのだから、まだいいほうなのかもしれない。
でも、その人のなかでは、確信に近かったのではないか、とも感じた。
誰にも勘違いというのはある。
それでも、その人は、(その4)で書いている人と同じにみえる。
同じ人ではない。
(その4)の人と、ここで書いている人は、30以上齢が離れている。
世代はずいぶん離れている。
それでも、どの世代にもいる、ということなのか。
それともたまたまなのか。