シングルボイスコイル型フルレンジユニットのいまにおける魅力(次なるステップは……・その4)
スレッショルド、PASS LABの創業者であるネルソン・パス。
パスのスピーカー遍歴は興味深い。
いまパスが使っているスピーカーは、
Cube Audioのフルレンジユニットを使ったシステムである。
どのくらいになるのかまでは正確に憶えていないが、
パスはフルレンジユニットを中心としたシステムを、けっこう長くやっている。
今回のシステムにしても、
フルレンジを取り付けている平面バッフルの底部には、
エミネント(だったと思う)のウーファーが床に向けて足されている。
以前はフルレンジ+スロットローディングの低域というシステムだった。
とにかくフルレンジユニットの低域を増強する方向である。
そういえばBOSEもそうだった。
501という小型のシステムがあった。
小口径のフルレンジユニットを、キューブ状のエンクロージュアにおさめ、
二段重ねにし、センターウーファーを加えたシステムだった。
フルレンジがけっこう小口径で高域がそこそこ再生可能だったから──、
という見方もできるが、それでもウーファーを足している点に注目したい。
日本のメーカーならば、トゥイーターを先に足すのではないだろうか。
日本のオーディオマニアも、少なからぬ人が、
フルレンジで始めて、次のステップとしてはトゥイーターであろう。
トゥイーターを先に足せば、繊細感は増す。
けれど、そのことで、歌手の肉体の再現が増すかといえば、そんなことはない。
人によって優先順位は違う。
フルレンジに、ウーファーよりも先にトゥイーターを、という人は、
私とは優先順位が違うだけなのだろう……、と理解はできなくはないが、
それでも歌手の肉体の復活を最優先してこその、オーディオならではの愉悦ではないのか。