AAとGGに通底するもの(その14)
結局、この項の(その6)で書いたスピーカーの音は、息吹をばっさりと拒否してしまったようにしか聴こえない。
ただ音だけが鳴っている、にしかすぎず、そこに誰の気配はない。
気配をまったく感じさせない音だから、そこにグールドを感じとることができず、
あれだけ聴いたゴールドベルグ変奏曲にも関わらず、
グールドみたいだけど、どうにも確信がもてない、というふうになってしまった、と考える。
気配はなにも演奏者だけのものではない。
優れた楽器、いわゆる名器といわれる楽器には、気配、もしくはそれに通ずるものがあって、
その楽器に見合った人によって弾かれることで、気配が発せられるのではないか。
そのどちらの気配をも、その高額なスピーカーシステムはばっさり削ぎ落としている。
皮肉ではなく、見事なまでに排除しているところに感心もする。
この気配は、単純にローレベルの再現性に優れている装置であれば再現できるものでもないから、やっかいだ。
皮肉なことに、このときのスピーカーシステムもアンプも、ローレベルの再現性では高い評価を得ている……。