ワイドレンジ考(その7)
アルテックの604シリーズは、38cmコーン型ウーファーとホーン型トゥイーターの同軸型で、
クロスオーバー周波数は、モデルによって多少異るが1.5kHz前後。
中高域はマルチセルラホーン採用なので、水平方向の指向性は十分だろう。
問題はクロスオーバー周波数から1オクターブ半ぐらい下までの帯域の指向性だろう。
実測データを見たことがないのではっきりしたことは言えないが、
604の、このへんの帯域の指向性はあまり芳しくないはず。
BBCモニターのLS5/1Aは、
38cmウーファーとソフトドームのトゥイーター(2個使用)の2ウェイ構成で、クロスオーバーは1.75kHz。
当時すでにBBCの研究所では指向性の問題に気がついており、
ウーファーをバッフルの裏から固定し、バッフルの開口部は円にはせずに、
横幅18cm、縦30cmくらいの長方形とすることで、水平方向の指向性を改善している。
ユニークなのは、30cm口径よりも38cm口径のほうが、高域特性に優れている理由で採用されていること。
1980年ごろ登場したチャートウェルのPM450E(LS5/8)は30cm口径ウーファーだが、
バッフルの裏から固定、開口部はやはり長方形となっている。
LS5/8のネットワーク版のロジャースPM510も、初期のモデルでは開口部は長方形だ。
アルテックがスタジオモニターとして役割を終えた理由として、いくつか言われているが、
指向性の問題もあったのではないかと思う。
同じことはタンノイの同軸型ユニットについても言える。