Posts Tagged アルテック

Date: 8月 5th, 2014
Cate: ジャーナリズム,

賞からの離脱(その35)

私がつまらないベストバイ特集号と感じていた51号、55号が売り切れて、
ベストバイということについて51号、55号よりも真剣に考え捉えていた47号が、
58号が出た時点で売れ残っている、ということにも少々驚いていた。

ちなみに51号の表紙はアルテックの604-8H、
55号はJBLのウーファーLE14Aである。

604-8Hは黒いコーン紙だが、LE14Aは白いコーン紙。
いまふり返ってみると、特集としてのベストバイの出来よりも、
表紙が何かのほうが売行きに大きく関係していたようにも思えてしまう。

それほど51号と55号のベストバイは、編集という仕事をまったく理解していなかった、
その頃私には手抜きのようにも感じられた。

59号もこのままいくのか、と思っていたら、また変った。
43号、47号には及ばないものの、51号、55号よりも良くなった、と感じたけれど、
59号のやり方を51号でやっていたら、おそらくがっかりしたであろう。

51号、55号のベストバイは、私以外の人も不満に感じていたのかもしれない。
だから59号で軌道修正した、とも考えられる。
そして、この59号でのやり方が、基本的にいまも続いているベストバイの始まりでもある。

Date: 7月 21st, 2014
Cate: 「スピーカー」論

トーキー用スピーカーとは(その11)

まだアルテックが健在だったころ、
JBLと比較でよくいわれていたのは、アルテックの方が音が飛ぶ、ということだった。

スピーカーの正面1mのところにマイクロフォンを立て、
どちらのスピーカーシステムも同じ音圧になるように設定する。
そして音を出す。

さほど広くない空間では、アルテックもJBLもスピーカーからの距離がましても差はあまりないが、
小劇場くらいの空間となると、後方の席まで音が届く(飛ぶ)のはアルテックである、と。

私はそういう空間での比較試聴をしたことはないけれど、そうだろう、と納得できる。
ここでいうアルテックのスピーカーとは、おそらくA7、A5といったところだろうし、
JBLは、というと、どれを指すのかはっきりとしないけれど、
同口径のウーファーと同規模のコンプレッションドライバーとホーンの組合せとなるのだろう。

どんなスピーカーであり、離れればそれだけ音圧は低下する。
球面波か平面波という違いがあれば、距離による音圧の減衰の仕方もちがってくるが、
どちらもホーン型で指向特性において大きく違わないのであれば、音圧の減衰も同じような結果になるはず。

にも関わらずアルテックは音が飛び、JBLはそうでない、といわれてきた。
おそらく音圧はアルテックもJBLも低下する。
ただ音圧と音量に対する聴き手の感じ方が違いがあるのであれば、
片方のスピーカーは音が飛び、トーキー用スピーカーにおいても、
スクリーン裏のスピーカーだけで劇場後方の席の観客も満足させることも不思議なことではなくなる。

Date: 7月 17th, 2014
Cate: 日本のオーディオ

山水電気のこと(その1)

山水電気の倒産がニュースになっている。
二年ほど前だったか、事実上倒産状態になっているというニュースが流れていたから、
今回のニュースにさほど驚きはなかった。

twitter、facebookのタイムラインでも、サンスイの倒産は話題になっていて、
あえて検索しないでも、今回の倒産に関してのいくつかの記事へのリンクが表示される。
いくつか読んだ。
なぜ山水電気が倒産したのかについての考察もあった。食い足りなかった。

この記事を書いた人はオーディオマニアじゃないんだな、ということが伝わってくるし、
もしオーディオに関心をもっていた(いる)人であったとしても、
サンスイの製品を実際に見て触って聴いてきた人ではないな、という感じがした。

私にとっての最初で最後のサンスイの製品はAU-D907 Limited。
それから1982年から丸七年間、サンスイのあらゆる製品を見て触って聴いてきた。

それらのことを今回の倒産と結びつけて書こうと思えば書けるのだが、
ここで書くのはまったく違った視点からである。

1970年代後半、ステレオサウンドは「世界のオーディオ」という別冊を出していた。
ラックスから始まり、マッキントッシュ、サンスイ、アルテック、ビクター、パイオニア、テクニクス、
ソニー、オンキョー、タンノイと続いてた。

私はJBLが出るのを期待していた。
が結局、タンノイ号で最後になってしまった。

Date: 7月 13th, 2014
Cate: サイズ

サイズ考(大口径ウーファーのこと・その3)

これは私の勝手な想像なのだが、
おそらくHIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙の撮影には、他のユニット、
つまりJBLのウーファーも用意してあったと思う。

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙とカラー口絵の撮影は亀井良雄氏。

カラー口絵には、もっと多くのユニットが登場する。
ウーファー、フルレンジユニットとして、
30Wの他にJBLの2220B、LE8T、アルテックの405A、エレクトロボイスのSP12C、
ドライバー/ホーンとして、
JBLの375、2440、2420、075、2405、HL88、HL89、2345、2397、他ネットワークが、
アルテックの802-8D、511B、ヴァイタヴォックスのS3、CN123、CN157、
エレクトボイスの1823M+8HD、T350などである。

編集に携わった経験からいえば、表紙とカラー口絵は同じスタジオで、同じ日に撮られているはずだ。

つまりはこれだけのユニットを並べ替えた結果としての、
JBLの075、HL88、エレクトロボイスの30Wの組合せといえる。

では、なぜ2220Bではなく30Wだったのか。

HIGH-TECHNIC SERIES-1の表紙では、075がほぼ中央の手前に置いてある。
075のやや後方(向って左側)にHL88があり、これらから少し離れた後方に30Wという配置。

この配置で、30Wを2220Bに置き換えたとして、これほどいいバランスの写真になったとは思えない。

Date: 12月 20th, 2009
Cate: ワイドレンジ

スーパートゥイーターに関して(続々余談)

底面開放型に関することで、感心するのはもうひとつあって、
それはエンクロージュア下部のカーテンの存在である。

底面開放型もしくは底面にバスレフポートがあるスピーカーでは、
とうぜんここから高域成分がもれてくるわけだが、
ベイシーのスピーカーのようにカーテン状のものがあると、
うまいぐあいに高域成分は吸音されていることだろう。

底面開放型であることを隠すためのカーテン状のものを下げられたのかもしれないが、
結果的には、音の面でもうまいやり方だと思う。

底面開放型を採用する場合、カーテンのアイディアもいっしょに使いたい。
もちろん見映えをどう処理するかは考えなくてはならないけれども。
アルテック604-8G用のエンクロージュアで、底面開放型か、底面にスリットをいれてみるかもしれない。

Date: 9月 16th, 2008
Cate: 105, 現代スピーカー

現代スピーカー考(その10)

使用ユニットの前後位置合わせを行なったスピーカー、一般的にリニアフェイズと呼ばれるスピーカーは、
キャバスがはやくからORTF(フランスの国営放送)用モニターで採用していた。 
1976年当時のキャバスのトップモデルのブリガンタン(Brigantin)は、
フロントバッフルを階段状にすることで、各ユニットの音源を垂直線上に揃えている。 

リニアフェイズ(linear phase)を名称を使うことで積極的に、
この構造をアピールしたのはテクニクスのSB-7000である。
このモデルは、ウーファー・エンクロージュアの上に、
スコーカー、トゥイーター用サブエンクロージュアを乗せるという、
KEFの#105のスタイルに近い(前にも述べたように、SB-7000が先に登場している)。 

さらに遡れば、アルテックのA5(A7)は、
ウーファー用エンクロージュアにフロントホーンを採用することで、
ホーン採用の中高域との音源の位置合わせを行なっている。 
#105よりも先に、いわゆるリニアフェイズ方式のスピーカーは存在している。

Date: 9月 11th, 2008
Cate: Mark Levinson, 瀬川冬樹, 瀬川冬樹氏のこと

瀬川冬樹氏のこと(その9)

2005年夏、ある人から、瀬川先生に関する話をきいた。

1981年(亡くなられた年)の春、 スイングジャーナルの組合せの取材でのこと。 
当時スイングジャーナルの編集部にいたその人が、 
取材前に、瀬川先生に組合せに必要な器材をたずねたところ、 
「スピーカーはアルテックの620Bを用意してほしい、 
アンプはマークレビンソンはもういい、 
マイケルソン&オースチンのTVA1とアキュフェーズのC240がいい、 
プレーヤーはエクスクルーシヴのP3を」ということだったとのこと。 

そして取材当日、620Bのレベルコントロールを、大胆に積極的にいじられたりしながら、
最終的に音をまとめ終わり、満足できる音が出たのか、 
「俺がほんとうに好きな音は、こういう音なのかもなぁ……」と 
ぽつりとつぶやかれた、ときいた。 

そのすこし前に使われていたのは、
JBLの4343に、 マークレビンソンのアンプのペア、
そしてアナログプレーヤーは、EMTの927DstかマイクロのRX5000+RY5500(それも二連仕様)。 

JBLの組合せとアルテックの組合せの違い、
表面的な違いではなく、本質に関わってくる違いを、どう受けとめるか。

Date: 9月 8th, 2008
Cate: LS5/1A, ワイドレンジ

ワイドレンジ考(その7)

アルテックの604シリーズは、38cmコーン型ウーファーとホーン型トゥイーターの同軸型で、
クロスオーバー周波数は、モデルによって多少異るが1.5kHz前後。 
中高域はマルチセルラホーン採用なので、水平方向の指向性は十分だろう。 
問題はクロスオーバー周波数から1オクターブ半ぐらい下までの帯域の指向性だろう。 
実測データを見たことがないのではっきりしたことは言えないが、
604の、このへんの帯域の指向性はあまり芳しくないはず。 

BBCモニターのLS5/1Aは、
38cmウーファーとソフトドームのトゥイーター(2個使用)の2ウェイ構成で、クロスオーバーは1.75kHz。
当時すでにBBCの研究所では指向性の問題に気がついており、
ウーファーをバッフルの裏から固定し、バッフルの開口部は円にはせずに、
横幅18cm、縦30cmくらいの長方形とすることで、水平方向の指向性を改善している。 
ユニークなのは、30cm口径よりも38cm口径のほうが、高域特性に優れている理由で採用されていること。 

1980年ごろ登場したチャートウェルのPM450E(LS5/8)は30cm口径ウーファーだが、
バッフルの裏から固定、開口部はやはり長方形となっている。 
LS5/8のネットワーク版のロジャースPM510も、初期のモデルでは開口部は長方形だ。

アルテックがスタジオモニターとして役割を終えた理由として、いくつか言われているが、
指向性の問題もあったのではないかと思う。 
同じことはタンノイの同軸型ユニットについても言える。