598というスピーカーの存在(KEF Model 303・その10)
瀬川先生の時代、
ステレオサウンドは、「コンポーネントステレオの世界」という別冊を出していた。
この「コンポーネントステレオの世界」で、
瀬川先生によるKEFのModel 303の組合せはない。
1979年末の「コンポーネントステレオの世界 ’80」に間に合えば間違いなく登場していたであろう。
瀬川先生は予算50万円から100万円、200万円へとステップアップする組合せで、
まずJBLの4301を鳴らす50万円の組合せをつくられている。
この50万円の組合せのスピーカーシステムの候補は、
4301の他に、ロジャースまたはオーディオマスターのLS3/5A、KEFのModel 303があった。
けれど103は製造中止になって、Model 303が発表されたばかりで、
そのニュースが、組合せの試聴に入ってから届いたそうである。
なので、この組合せに303は登場しないが、写真は載っている。
どのくらい303の登場が遅かったのかは正確にはわからないが、
おそらく一〜二週間なのだろう。
「コンポーネントステレオの世界 ’80」の巻頭、
「80年代のスピーカー界展望」のなかで、
《イギリスKEFは、リファレンスシリーズの最高機種♯105をシリーズIIに改良し、また、小型の101を新たに加えた。103は製造中止になるとのこと。そしてコンシュマー用としては、ローコストの303と304が登場したが、これはなかなかの出来ばえだ》
と瀬川先生が書かれている。
さらに巻末の「’80特選コンポーネント・ショーウインドー」では、
井上先生が303について、
《柔かく伸びやかな低音と透明な高音だ》と書かれている。
巻末には、さらに行方洋一氏と安原顕氏による
「ローコスト・ベストコンポ徹底研究」があり、
そこに303は登場している。
メインの組合せの試聴には間に合わなかったが、1979年中にモノは到着しており、
試聴も行われていたことがわかる。