Date: 1月 9th, 2019
Cate: MERIDIAN, ULTRA DAC
Tags:

メリディアン ULTRA DACを聴いた(その28)

40年ほど前、つまり1970年代後半ごろのオーディオでは、
女性ヴォーカルの再生に向く──、そういったことが割といわれていた。

力の提示に関してはややよわいところがあるものの、
ウェットな音色で、声帯の湿り気を感じさせ、
繊細でどこか色気のある音、そして刺激的な音を出さないオーディオ機器は、
スピーカーシステムであれ、アンプであれ、カートリッジであれ、
弦やヴォーカルの再生に向く、といった評価がなされていた。

ヴォーカルだけでなく、たいてい「弦やヴォーカル」となっていたし、
こういった場合、ヴォーカルは男性歌手も含まれているわけだが、
ウェイトとしては女性ヴォーカルと受け止めてよかった、といえる。

私にとってのベストバイ特集号として初めてのステレオサウンドは43号。
43号は、読み返した。
何度も何度も暗記するほどに読んだ。

43号でベストバイとして選ばれた機種のほとんどは、当時聴いたことがなかった。
実機を見たことのあるモノも少なかった。

43号に掲載されている写真と、各筆者の文章から、
どれが女性ヴォーカルの再生にぴったりなのか、
主に、そういう視線でくり返し読んでいた。

スペンドールのBCII、QUADのESL、
ラックスのSQ38FD/II、パイオニアのExclusive M4、
オンキョーのIntegra A722nII、
これらのオーディオ機器が女性ヴォーカルを色っぽく再生してくれそうな感じだった。

ここでことわっておきたいのは、
当時の女性ヴォーカルの再生に向く、ということと、
現在の、それもメリディアンのULTRA DACが聴かせる声(歌)の素晴らしさということとは、
そうとうに次元の違ったことであり、同列に語れない、ともいえる。

あのころの女性ヴォーカルに向く、というのは、
いわば個々のオーディオ機器の個性的音色が上手く作用しての、そういうことであり、
このことは音を語る上での「音色」という言葉のもつ意味について、
じっくり書けるほどに興味深いところでもあるが、
ここではそのことに触れると先にすすめなくなるので割愛するが、
とにかく40年ほど前の、ヴォーカル再生に向く、というイメージで、
ULTRA DACの、声(歌)が素晴らしい、ということを捉えてほしくない、ということだ。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]