オーディオ評論家の「役割」、そして「役目」(その19)
ステレオサウンド 14号に、上杉先生がこんなことを書かれている。
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いつの間にか私にもオーディオ評論家という肩書きがついてしまったようだ。しかし、私は、評論家という自覚よりも、やはり、技術者という自覚の方が、はるかに強い。
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私は、オーディオ評論は、ステレオサウンド創刊以前には、
はっきりとしたかたちでは存在していなかった、と思っている。
ステレオサウンドも創刊号では、明確な「オーディオ評論」は打ち出せてない。
それまでなかったものをいきなりかたちにできるわけがないからしかたのないことであって、
2号以降、オーディオ評論とステレオサウンドとともに形づくられていった、といえる。
ステレオサウンドが、オーディオ評論を生み出したわけではない。
だからといって、ステレオサウンド以前にオーディオ研究家・技術者として活躍されていた人たちだけでは、
やはりオーディオ評論は生れてこなかったか、もしくはもっと遅れてきたはず。
ステレオサウンドという場があってはじめて、
オーディオ研究家・技術者とそれまで呼ばれていた人のなかから、オーディオ評論の芽が生れてきた。