Date: 10月 11th, 2018
Cate: 価値・付加価値
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オーディオ機器の付加価値(買い方によって……・その1)

昨晩公開した「Cinema Songs」で、
黒田先生が《なんとなくモジモジしながら》薬師丸ひろ子の「花図鑑」を買われたことを書いた。

この《なんとなくモジモジしながら》という気持は、付加価値かもしれない──、
書き終って、ふと思った。

黒田先生は、以前ベイシティ・ローラーズのレコードを買ったときのことも書かれていた。
レコード店の店員に、「贈り物ですか」ときかれた、と書いてあった。

以前は、レコード(LPにしてもCDにしても)は、そうやって買うしかなかった。
クラシックのレコードなら、
作曲家別だったり、演奏家別だったりする分け方をされた多くのレコードを一枚一枚、
ジャケットを見て、手にとって、レジまで持っていく。

レジにはとうぜん店員という人がいる。
馴染みのレコード店なら、顔なじみの店員がいるし、
初めてのレコード店、めったに行かないレコード店ならば、
見知らぬ人が店員としてレジにいる。

人がいるから、《なんとなくモジモジしながら》「花図鑑」を買うことになる。
誰もいないレジで、客が自分でバーコードを読み込ませて──、という、
無人レジであったならば、《なんとなくモジモジしながら》ということはない。

インターネットでの購入でも、それはない。
宅急便で届くわけだが、配達する人は、そのダンボール箱の中身が、何なのかは知りようがない。
顔を合わせる人には、何も知られることなく買物ができるのがいまの時代であり、
顔を合せずには買うことができなかった時代を生きてきた。

だから《なんとなくモジモジしながら》という黒田先生の気持はわかる。
そういう気持だけではない。

イタリア・チェトラから、
フルトヴェングラーとミラノ・スカラ座による「ニーベルングの指環」が出た。
私にとって、初めての「ニーベルングの指環」の全曲盤だった。

銀座の山野楽器で買ったときは、少し誇らしい気持があった。
いまみたいにCDボックスの一枚あたりの値段の安さなんてことは、
そのころは考えられないほどに、レコード一枚の値段は、決して安くはなかった。

「ニーベルングの指環」全曲盤ともなると、枚数も多いし、重いし、高かった。
やっと買える(買えた)という気持があったのは、いまも忘れない。

顔を合わせて買うからこそ生じる買い手の気持、
これは、個人的な意味での付加価値かも、とおもう。

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