Date: 9月 16th, 2018
Cate: MERIDIAN, ULTRA DAC
Tags:

メリディアン ULTRA DACを聴いた(その17)

想い浮かべた情景は、まだある。
瀬川先生がSMEの3012-R Specialについて、ステレオサウンド 56号に書かれていたことだ。
     *
 音が鳴った瞬間の我々一同の顔つきといったらなかった。この欄担当のS君、野次馬として覗きにきていたM君、それに私、三人が、ものをいわずにまず唖然として互いの顔を見合わせた。あまりにも良い音が鳴ってきたからである。
 えもいわれぬ良い雰囲気が漂いはじめる。テストしている、という気分は、あっという間に忘れ去ってゆく。音のひと粒ひと粒が、生きて、聴き手をグンととらえる。といっても、よくある鮮度鮮度したような、いかにも音の粒立ちがいいぞ、とこけおどかすような、あるいは、いかにも音がたくさん、そして前に出てくるぞ、式のきょうび流行りのおしつけがましい下品な音は正反対。キャラキャラと安っぽい音ではなく、しっとり落ちついて、音の支えがしっかりしていて、十分に腰の坐った、案外太い感じの、といって決して図太いのではなく音の実在感の豊かな、混然と溶け合いながら音のひとつひとつの姿が確かに、悠然と姿を現わしてくる、という印象の音がする。しかも、国産のアーム一般のイメージに対して、出てくる音が何となくバタくさいというのは、アンプやスピーカーならわからないでもないが、アームでそういう差が出るのは、どういう理由なのだろうか。むろん、ステンレスまがいの音など少しもしないし、弦楽器の木質の音が確かに聴こえる。ボウイングが手にとるように、ありありと見えてくるようだ。ヴァイオリンの音が、JBLでもこんなに良く鳴るのか、と驚かされる。ということは、JBLにそういう可能性があったということにもなる。
 S君の提案で、カートリッジを代えてみる。デンオンDL303。あの音が細くなりすぎずほどよい肉付きで鳴ってくる。それならと、こんどはオルトフォンSPUをとりつける。MC30とDL303は、オーディオクラフトのAS4PLヘッドシェルにとりつけてあった。SPUは、オリジナルのGシェルだ。我々一同は、もう十分に楽しくなって、すっかり興に乗っている。次から次と、ほとんど無差別に、誰かがレコードを探し出しては私に渡す。クラシック、ジャズ、フュージョン、録音の新旧にかかわりなく……。
 どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる。酒の出てこないのが口惜しいくらい、テストという雰囲気ではなくなっている。ペギー・リーとジョージ・シアリングの1959年のライヴ(ビューティ・アンド・ザ・ビート)が、こんなにたっぷりと、豊かに鳴るのがふしぎに思われてくる。レコードの途中で思わず私が「おい、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」と叫ぶ。レヴィンソンといい、JBLといい、こんなに暖かく豊かでリッチな面を持っていたことを、SMEとマイクロの組合せが教えてくれたことになる。
     *
《どのレコードも、実にうまいこと鳴ってくれる。嬉しくなってくる》とある。
まさに、そういう感じで鳴ってくる。

《ヴァイオリンの音が、JBLでもこんなに良く鳴るのか、と驚かされる。ということは、JBLにそういう可能性があったということにもなる》
とも書かれている。

これも同じようなことを感じていた。
喫茶茶会記のアルテックのドライバー806Aには、
いま中国製の互換ダイアフラムが装着されている。
一枚四千円くらいのダイアフラムである。

値段を考慮すれば、よく出来ているダイアフラムと思うけれど、
不満がまったくないわけでもない。気になるところは、やはりある。
それでも、アルテック純正のダイアフラムは、いまでは非常に高価だし、
この点に関しては、アルテックのドライバーを愛用されている方、共通の悩みだろう。

このダイアフラムを、あれにしてみたら──、と思ってはいるが、
それでもULTRA DACでの音は、このままでもいいんじゃないか、と思わせるほどだった。

瀬川先生は《レコードの途中で思わず私が「おい、これがレヴィンソンのアンプの音だと思えるか!」》
と叫ばれたそうだが、
私だって、「おい、これが四千円もしないダイアフラムの音だと思えるか!」といいたくなっていた。

Leave a Reply

 Name

 Mail

 Home

[Name and Mail is required. Mail won't be published.]