メリディアン ULTRA DACを聴いた(その5)
グラシェラ・スサーナの「仕方ないわ」の前に聴いた松田聖子の「ボン・ボヤージュ」でも、
松田聖子の歌を録るためのマイクロフォンのクォリティが、
それまで喫茶茶会記で聴いてきたCDプレーヤー(ラックス、パイオニア、マッキントッシュ)よりも、
一段上であるように感じていた。
もっといえばクォリティの高いコンデンサー型マイクロフォンのようにも思えた。
実際のところ、どのマイクロフォンなのかは知らないが、
少なくともそれまでの再生では、そんなふうに感じたことは一度もなかった。
このときもULTRA DACのフィルターはshortである。
グラシェラ・スサーナの「仕方ないわ」の音は、
録音の現場に居合わせたかのような鳴り方だった。
モニタースピーカーというモノがあるが、
メリディアンのULTRA DACはモニターD/Aコンバーターといえる性能を持っている、ともいえる。
けれど、一般的なモニタースピーカーに対する印象で鳴ってくるわけではない。
即物的な鳴り方、アラ探し的な鳴り方ではない。
「仕方ないわ」で、フィルターをmediumにしてみる。
この音も魅力的ではあったが、私にはshortの印象のほうが強かっただけに、
mediumの音を聴きながらも、shortの音の印象を思い出してもいた。
longでも、さらに音は変る。
short、medium、long、
三つのフィルターのどれがいいか、といえば、
グラシェラ・スサーナの「仕方ないわ」に関するかぎり、私はshortだと言い切る。
けれど一緒に聴いていた人は、mediumの音も捨て難い、とのこと。
それもわかる。
ここでのフィルターによる音の違いは、絶対的ではない。
かけるディスクが変れば、評価は違ってくる。
shortがもっともよかったのは、グラシェラ・スサーナの「仕方ないわ」においてである。
ただし、それも別の聴き方、別の面を求めれば、また変ってくる。