「複雑な幼稚性」が生む「物分りのいい人」(理解についての実感・その12)
ステレオサウンド 207号の特集に登場したYGアコースティクスのHailey 1.2は、
多くの人がハイ・フィデリティ・リプロダクションのスピーカーシステムと認めよう。
誤解なきよう書いておくが、
すべてのスピーカーシステムが、
ハイ・フィデリティ・リプロダクションか、
グッド・リプロダクションのどちらかに分類できるというわけではない。
けれど(その11)で指摘したように、
グッド・リプロダクションのフランコ・セルブリンのKtêmaが、
ハイ・フィデリティ・リプロダクションの定義「原音を直接聴いたと同じ感覚を人に与えること」、
これにより聴く人によっては、ハイ・フィデリティ・リプロダクションのスピーカーへとなりうる。
では逆はあるのか。
Hailey 1.2がグッド・リプロダクションのスピーカーと感じる人がいるのか。
そういう人はなかなかいないだろう(まったくいないわけではないだろうが)。
けれど、柳沢功力氏は207号の試聴記で、Hailey 1.2の金属的な音を指摘されている。
そのことがavcat氏のツイートにつながっていき、
ステレオサウンドの染谷一編集長の不用意な謝罪にまでいったわけだが、
柳沢功力氏は、207号の試聴記に
《「モーツァルト」も「春の祭典」も「ロイヤル・バレエ」も、アコースティックな音をベースとするクラシック曲は、まったく別物の音楽に仕上げてしまうと言っていい》
とまで書かれている。
こうなると、柳沢功力氏にとって、Hailey 1.2は、
原音を直接聴いたと同じ感覚を人に与える」スピーカーではないわけだ。
つまりHailey 1.2は、柳沢功力氏にとっては、
ハイ・フィデリティ・リプロダクションのスピーカーでもないし、
もちろんグッド・リプロダクションのスピーカーでもない。