老いとオーディオ(齢を実感するとき・その9)
28年前の8月は、今年ほどではないにしても暑かった。
8月下旬に左膝を骨折した。
夜だった。
近くの大学病院(いまニュースになっている大学)は空きがないということで、
翌朝、もう一度来てくれ、といわれた。
独り暮しの部屋に帰り、横になっても寝つけなかった。
5時ごろの日の出が待ち遠しかった。
ふたたび大学病院に行く。
系列の病院に入院しなさい、といわれた。
ほとんどそれだけのために行ったようなものだった。
また帰宅して入院の準備。
紹介された病院へと行く。もう薄暗くなっていた。
退院したのは10月なかば。
すっかり涼しくなっていた。
入院した時はTシャツと短パンだったけれど、それで退院するわけにもいかず、
友人に秋用の服を頼んだ。
水不足の夏だった。
退院のときは、水の心配をすることもなくなっていた。
一ヵ月以上の入院だと季節が変っていく。
春に入院して初夏に退院するのと、
晩夏に入院して秋に退院するのとでは、入院している者の心境は同じとはいえないだろう。
骨折でもそんなふうに感じていた。
一ヵ月、二ヵ月……、入院が長くなれば、夏の暑さは遠いものになってしまう。
冬が近づいていることを感じられていたのではなかろうか。