Date: 3月 10th, 2018
Cate: Jazz Spirit
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ジャズ喫茶が生んだもの(その2)

岩崎先生が書かれている。
     *
 ぼくの場合ですと、そのとき好きだった音楽によってスピーカーの変遷があり、その時その時でずいぶん変わっているのです。また、部屋の広さが変わることによって、またまたスピーカーへの期待というか、選び方がすっかり変わってきてしまった。
 そのへんのことをここで書いておきたいと思います。
 昔、洋間というより板の間と言うにふさわしいかなりちゃちな板の間で鳴らしていたわけです。そのときまで、いくつかの国産スピーカーを経て、戦前からある英国系のローラーとか、アメリカのマグナボックスなどを、戦後の国産スピーカー、たとえば、ミラグラフやダイナックスなどにまじって聴いていたのですが、どうも外国製のスピーカーのもっている良さというのが非常に強く印象づけられ、傾倒するきっかけになっていたわけです。その頃はまだラジオ雑誌でも、海外製品を取上げることはまずなくて、単に自分自身の聴いた感じとか、外観のすばらしさだけでもって選んでいました。
 たまたまその時期——学生時代からやっと社会に出たてのときなのですが、たいへんショックを受けたというか、オーディオに強く指向するきっかけになったことがあります。銀座の松屋の裏に「スイング」という喫茶店があり、デキシーランドとニューオルリンズジャズを鳴らしていた。当時はジャズ喫茶そのものがまったくなかったころで、店の客の半分は当時の占領軍の兵隊だったわけです。
 その店を知ったのは、たまたま通りがかりに非常に陽気な音楽が聴こえてきて、ついふらふらと中へ入っていったからです。店内で鳴っている音は当時のぼくにはとうていスピーカーから出ている音には聴こえなかった。奥にバンドがいて演奏しているのではないか、と思ったくらい、生き生きした大きなエネルギーで鳴っていました。紫煙の中に入っていくと、目の前にスピーカーがあった。それは今までに見たこともないスピーカーでした。それが実はあとでわかったのですが、アルテックの603Bというスピーカーで、いまの604Bのジュニア型として出ていたスピーカーです。
 この38センチの、マルチセラーホーンをつけたスピーカーに接したときに、スピーカーのもっている性格というか、再生装置の中においてスピーカーがいかに大事であるかということを、強烈に知らされたわけです。ぼくが大型スピーカーに執着するというのは、このときに植えつけられたもので、それ以来、スピーカーは15インチ=38センチでなければだめだという認識を強くもっています。
(「オーディオの醍醐味はスピーカーにあり」より)
     *
銀座・松屋の裏にあった「スイング」のことは、
オーディオ歴の根底をなす二十六年前のアルテックとの出会い」の冒頭にも書かれている。

そう、このころからすでにジャズ喫茶ではアルテックが鳴らされていた。
この時代のアルテックの603Bの価格を、私は知らないが、
そう簡単に買えるモノではなかったはずだ。

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